
今さら聞けない『ルールベース画像検査』とは?
みなさま、こんにちは。
近年、AI技術の進化は目覚ましく、その応用範囲は画像処理の分野にも広がっています。以前は経験豊富な技術者が設定しなければ難しかった画像処理が、今ではAIが自動的に判断を行うことで、知識のない人でも簡単に利用できるようになりました。
しかし、AIを用いた画像処理には、「どのような基準で判定されているかが人間にはわからない」という特有の課題が存在します。このような状況下では、技術者にとって古典的な「ルールベース画像検査」の理解が依然として重要です。
本ブログでは、そのルールベース画像検査について詳しくご紹介していきます。
目次[非表示]
- 1.そもそも画像センサはどうやって対象物を認識しているの?
- 1.1.画素(ピクセル)とは
- 1.2.画素(ピクセル)が持つ情報
- 1.3.画素(ピクセル)情報で対象物を判定
- 2.ルールベースとは
- 2.1.ルールベースの弱点
- 3.ルールベースの代表的な処理項目
- 3.1.登録した形を探す〈形状サーチ〉
- 3.2.登録した色を探す〈ラベリング〉
- 3.3.物の位置を探す〈エッジ位置〉
- 3.4.キズや汚れを探す〈キズ汚れ〉
- 3.5.コードを読む〈バーコード/2 次元コード〉
- 3.6.文字を読む〈OCR〉
- 4.まとめ
そもそも画像センサはどうやって対象物を認識しているの?
“画像センサは色の差で対象物を認識している”
カラーカメラでは赤・緑・青(RGB)それぞれの色成分、モノクロカメラでは明度情報を取得し、その濃淡の変化をもとに「ここが物体の境界だ」「この部分に注目すべきだ」と認識しているのです。濃淡情報の差分を解析することで、形や距離、さらには被写体の種別まで推測できる仕組みを、これから詳しく見ていきましょう。
画素(ピクセル)とは
画像は「画素」または「ピクセル」と呼ばれる最小単位の点で構成されています。
ペットボトルのフタのモノクロ(グレースケール)画像でご説明します。これをどんどん拡大していくと、マス目状に見えてきます。この1つ1つのマス目が「画素(ピクセル)」です。

画素数が多いほど細かい部分まで認識できて精度は上がりますが、処理時間は長くなり、データサイズも大きくなります。用途に応じて、カメラの解像度(画素数)を選定する必要があります。
画素(ピクセル)が持つ情報
画素(ピクセル)ごとに、RGB画像は赤・緑・青の色成分を、モノクロ(グレースケール)画像は明るさの値を持ちます。
一般的な8bit画像では、0~255の256階調で表現します。

画素(ピクセル)情報で対象物を判定
ここでは、モノクロ(グレースケール)画像を、明るさ情報を使って「背景」と「フタ」を黒と白に分ける『二値化』という手法を見てみましょう。
設定値(しきい値)を200にし、明るさ0~200を「背景」、201~255を「フタ」と判定すると、下図のように2分化できます。

このように二値化することで、画素単位で「ここがフタ」「ここが背景」というラベル付けが可能になります。
ルールベースとは
前述を一例として、ルールベースの画像処理では、あらかじめ設定したしきい値や色・形状・エッジなどの特徴量を基準に、各画素や領域が条件を満たすかどうかを判定し、対象を抽出・分類することです。
ルールベースの弱点
ルールベースは判断基準が明確というメリットの反面、設定したしきい値だけでは判定できないケースがあります。
例えば、ペットボトルのフタを、背景とフタで二値化する際、フタの上の影が背景と同じ明度になると、影の部分が背景と誤判定されてしまいます。

画像処理で判定を安定させるためには、適切な環境作りや前処理が不可欠ですが、そのためには豊富な経験と高度な技術が求められます。
<誤判定を防ぐ対策例>
- 照明を均一化し、影や反射を最小限に抑える
- 背景を単色または対比の強い色で統一し、対象物を際立たせる
- 対象物の向きや間隔を一定に保ち、画角内でのブレを減らす
- 画像処理ソフト(ツール)で色やコントラストなどの調整をする
一方、AI(機械学習/深層学習)を使った画像処理では、膨大な学習データから影や反射などのバリエーションをモデルが自動抽出できるため、ルールベースでは設定しきれない条件変動にも柔軟に対応可能です。
しかし、AIもルールベースと同様に、判定しやすい環境で撮影された画像のほうが誤検知が少なくなるため、ルールベースの基礎を学んでおくことが非常に役立ちます。
ルールベースの代表的な処理項目
ここからは、オムロンの画像処理システム FHシリーズでよく使われている処理項目を参考に、ルールベースの基本的な処理をご紹介します。
登録した形を探す〈形状サーチ〉
『パターンマッチング』とも呼ばれるこの処理項目では、あらかじめ物体の輪郭モデルを登録し、画像から同じ形を検索して位置と傾きを検出します。
色や明るさではなく輪郭を使うため、光の反射や部品の個体差、角度ズレ、ノイズ、一部が隠れた環境でも高速・高精度に動作します。

《用途》有無検査、異品種判別、個数検査、位置検査、角度検査 など
登録した色を探す〈ラベリング〉
『色抽出』とも呼ばれるこの処理項目では、あらかじめ物体の色を登録し、画像に色のかたまりがいくつあるかをカウントしたり、面積、重心位置を求めます。

《用途》有無検査、面積検査、異品種検査、個数検査、位置検査 など
物の位置を探す〈エッジ位置〉
計測領域内の色の変化を使って、物の位置を検査します。

《用途》位置検査、寸法検査 など
キズや汚れを探す〈キズ汚れ〉
計測領域内の色のばらつきを使って、キズや汚れを検出します。

《用途》キズ検査、汚れ検査、バリ検査 など
コードを読む〈バーコード/2 次元コード〉
バーコードや2次元コードを読み取り、コードに含まれる数字や文字情報を取得します。
コードを読み取った後、そのコードが、どれだけ欠けや汚れがなく、くっきり印刷されているかの品質判定をする事も可能です。

《用途》コード間違い検査、異品種検査、印字品質検査、トレーサビリティ など
文字を読む〈OCR〉
画像に写っている文字を読み取り、テキストデータとして出力します。

《用途》賞味期限検査、ロットNo検査、異品種検査、印字有無検査、トレーサビリティ など
まとめ
近年、AIの画像処理は格段に進化し、専門知識がなくても高精度な検査が可能になりました。しかし「なぜその結果になったのか」が分かりにくいブラックボックス化の問題もあり、基本となるルールベース検査の理解は今なお重要です。
ルールベースでは、「もしここがこうなっていたら正常」「こうなっていたら異常」といった判断基準を人があらかじめ決め、その条件に合致する特徴を探して検査を行います。
ルールベースが得意とする“明確なパターン”を安定して取り込みやすい現場環境を整えることは、AIモデルの誤検知を大きく抑制する鍵ともなります。
これから画像検査を学ぶ方も、ルールベースの基礎をしっかり押さえることで、AIを活用した高度な画像処理にもつなげられるでしょう。













